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2016年4月12日 (火)

したたかな外交―タイの高速鉄道と中国

(某所に発表したものです)

 今年(2016年)3月末、タイの運輸大臣は中国の協力で進めていた首都バンコク~ラオス国境のノンカイまで約750キロの高速鉄道の建設につき、とりあえずバンコクから途中のナコンラチャシマ(コーラート)まで250㌔を自力で行うと発表した。中国の戦略に乗る形で進められていたプロジェクトを、タイが独自にやることに変更したのだ。

  昨年(2015年)秋に着工式が行われた中国・タイ共同による高速鉄道プロジェクトは、当初から不協和音がささやかれていた。今回の決定も「巨額の建設費の分担および借款に関する条件で一致できなかったため」とされている。一方で引き続き中国の協力を仰ぐ、と配慮も忘れない。

  バンコクの事情通の話では「最初から条件が折り合ってない」「中国が約束した利率を引き上げた」など、タイ側の不満が重なっていたとのこと。同じく中国の協力によるインドネシアの新幹線が座礁に乗り上げていることを含め、「そら見たことか」「やっぱり日本の出番だ」という声もある。
 しかし、現実には中国はタイの希望を入れて借款利率を引き下げてもいる。その上でのタイの決定だけに、「中国の横暴にタイの堪忍袋が切れた」という見方は都合がよすぎる。

  在バンコクの大使館関係者の見方はこうだ。「従来、中国は自国からラオス、マレー半島を経てシンガポールに至るルートを戦略的に重要視していた。しかし、ミャンマー政府との間で合意が交わされる見込みになったため、わざわざタイやマレーシアを経由するより、ミャンマー国内を通って東方のアンダーマン海に出るルートを選んだのだ」。
  しかしこれもアウンサン・スーチーが率いるミャンマーの政治情勢が必ずしも安定せず、インフラの整備も格段に落ちるルートにどのくらい実現性があるのか、疑問なしとしない。

  私は、「また、タイのしたたかな外交が出たな」と思っている。
 アジアで植民地化されなかったのはタイと日本だけである。日本は明治維新を成功させた後、「富国強兵」路線を取ることにより、独立を保った 一方のタイは、欧米列強と匹敵するだけの経済力、軍事力はもとより持ち合わせていない。タイが使ったのは「知恵」であった。
 最初はタイの植民地化を狙う英国とフランスのバランスを取りながら、その間で生き延びた(もちろん「タイには手を出さない」という英仏の密約もあった)。第2次大戦前になると、当時破竹の勢いであった日本の力を利用してイギリスから領土を取り戻し失地回復している。
 1942年には日本と軍事同盟を結んで英米に宣戦布告するが、同時に「自由タイ」という反日運動を米国・英国の国内で発足させて、戦争終了時にはちゃっかりと敗戦国となるのを免れている。とにかくしたたかなのだ。

  2014年5月のクーデター後、アメリカがタイへの制裁を表明すると、すぐにタイの外務次官が北京に飛んだ。「アメリカがダメなら中国の手を借りますよ」という意思表示だ。今回も中国との高速鉄道に同意しながら、日本からも協力を引き出そうとしている。

  断っておくが私はタイの姿勢を責めようというのではない。全く逆で外交とはそういうものなのだ。そのリアリズムをもっと日本を学ぶべきではないだろうか。外交とは「したたかなもの」なのだから。 (以上)

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